1. 因幡の白兎Inabano-shirousagi

隠岐島(おきのしま)に住んでいた一匹のウサギは、ある日、一度 本土に渡ってみたいと思いました。 しかし、本土との間には広い海があり容易にわたることはできませんでした。
はたと名案を思いついたウサギは海に住むワニザメをだまして、 「おまえたちと私達のどちらの仲間が多いかくらべっこをしよう」と もちかけると、負けず嫌いのワニザメはそれを真に受け仲間を全部 連れてきました。
そこでウサギは「では数をかぞえるからこの隠岐島から気多の岬 まで一列にならんで欲しい」と言い、「一つ 〜 、二つ 〜 」と数え ながらその並んだワニザメの上を渡ってゆきとうとう念願の岬に着く ことができたのです。
あまりにもうまくいったので有頂天になったウサギは、「やーい、 お前達はだまされたんだ」と言って笑ってしまいました。すると一番 最後のワニザメが怒ってウサギの皮をはいでしまったのです。
赤裸になって苦しんでいるウサギを見つけたのは大国主之命 (オオクニヌシノミコト)でした。 かわいそうに思った大国主之命は、蒲(がま)という植物の花粉を 敷き、その上に寝転がれば直ると教えてやりました。すると、ウサギの痛みは止まり体は元にもどったのです。
喜んだウサギは、「いずれあなたは八上比売(やがみひめ)という たいそう美しい方を妻にし、そしてこの国を治めることになる でしょう」と予言したといわれています。